2年ぶりの賞金女王を目指してスタートした2019年シーズン。開幕戦こそまさかの予選落ちを喫したものの、続く第2戦「ヨコハマタイヤ ゴルフトーナメントPRGRレディスカップ」で早くもシーズン初勝利。地元・四国の大会で節目となるツアー通算10勝目を刻んだ。
同会場は風の影響を受けやすいアップダウンコースだが、年初に登場したばかりのG410 PLUSドライバーで距離を稼いで勝利を引き寄せた。ちなみにシャフトはPING純正の「ALTA J CB RED」をチョイス。シーズン前に米・アリゾナ州フェニックスのPING本社で行ったフィッティングで、飛距離や弾道の高さ、左右の曲がり具合などをチェックして導き出されたのがこのセッティングだ。
また、複数シーズンにわたり使い続けているi210アイアンも地元Vに貢献。トリッキーなコースに対して、ハイボール、ローボール、ドロー、そしてフェードなど多彩なショットを駆使し、許容性に加え操作性の良さが特徴であるこのアイアンでスコアメイクにつなげた。
6月の第15戦「宮里藍 サントリーレディスオープンゴルフトーナメント」でシーズン2勝目。ここで威力を発揮したのは、スイッチしたばかりのG410 LSTドライバーだ。より吹き上がりが抑えられ、低スピンで強い弾道を生み出すこのLSTとの相性は抜群。ディフェンディングチャンピオンとして臨んだ翌週の「ニチレイレディス」も制して、自身初となる2週連続優勝を達成した。
8月の海外転戦後に迎えた第26戦「ニトリレディスゴルフトーナメント」では、周囲をアッと驚かす選択に出た。なんと試合に投入するパターをレディースシリーズG Le2のECHO(エコー)に変更。ツアー屈指のパター巧者でありながらも、この頃自身のパッティングに不調を覚えていたため、打開策を見出すべく安定感のあるこのマレットタイプパターに白羽の矢を立てたのだ。
そしてこのECHOパターと共に大会4日間を戦い抜き、見事シーズン4勝目を手にした。試合で用いたECHOはグリップも標準スペックのまま。ツアープロが実戦にレディースモデルを投入するのは異例中の異例だが、先入観や慣習に囚われず、勝つために最善の判断を下せる柔軟な鈴木選手の思考を垣間見ることができたエピソードとなった。
だが、事は順調にばかりは運ばない。この後の9月末には左手親指と手首を痛めて約一ヶ月の戦線離脱を余儀なくされた。欠場中にはゴルフからあえて距離を置き、自らを見つめ直した時期もあったようだ。
しかし、復帰直後の第35戦「樋口久子 三菱電機レディスゴルフトーナメント」では素晴らしいパフォーマンスを見せ、首位で迎えた最終日終盤には後続の猛追を受けながらも粘り強いプレーを続けて完全優勝でシーズン5勝目をもぎ取った。
復活を印象付けるターニングポイントとなったこの試合においては、またもECHOパターが活躍。要所で着実にパットを沈め、大会を通しての平均パット数は28.67。ソフトな打感を生み出す二重構造のインサートと独自技術のTR溝がナイスパットをアシストして、他のパターと変わらず妥協の無い開発設計のもとで作られるG Le2シリーズの性能も証明されることとなった。
続く翌週の「伊藤園レディスゴルフトーナメント」では、ツアー史上2人目、日本人選手として初となる3連勝の偉業を成し遂げると同時に、ツアー史上3人目のシーズン7勝目に到達。怒涛の連勝で遂に賞金ランキング1位に躍り出た。
渋野選手を含むランキング上位3選手の獲得賞金額が僅差となり、近年稀にみる激しい争いが繰り広げられた賞金女王レースの決着は、シーズン最終戦の「LPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」に持ち越された。大会序盤では苦戦を強いられたが、最終日には自身のシーズンを象徴するかのような目覚ましい追い上げを見せて5位タイに食い込み、2017年以来2年ぶりとなる2度目の栄誉を勝ち取った。
出身地 | 徳島県三好郡 |
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生年月日 | 1994年5月9日 |
趣味 | ショッピング、料理 |
ゴルフ歴 | 11歳~ |
平均パット数(パーオンホール) | 1位 | 1.7561 |
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平均パット数(1ラウンド当たり) | 2位 | 28.7901 |
平均ストローク | 2位 | 70.3074 |
リカバリー率 | 2位 | 70.2326 |
サンドセーブ率 | 2位 | 52.6316 |
平均バーディ数 | 3位 | 3.7284 |
パーセーブ率 | 3位 | 88.7517 |
ダイキンオーキッドレディスゴルフトーナメント | 予選落ち |
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ヨコハマタイヤPRGRレディス | 優勝 |
Tポイント×ENEOSゴルフトーナメント | 9位タイ |
アクサレディスゴルフトーナメント in MIYAZAKI | 24位タイ |
ヤマハレディースオープン葛城 | 14位タイ |
スタジオアリス女子オープン | 4位タイ |
フジサンケイレディスクラシック | 2位タイ |
パナソニックオープンレディースゴルフトーナメント | 10位タイ |
ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ | 棄権 |
ほけんの窓口レディース | 14位タイ |
全米女子オープン | 22位タイ |
宮里藍 サントリーレディスオープンゴルフトーナメント | 優勝 |
ニチレイレディス | 優勝 |
アース・モンダミンカップ | 26位タイ |
ニッポンハムレディスクラシック | 41位タイ |
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エビアン選手権 | 55位タイ |
AIG全英女子オープン | 予選落ち |
北海道meijiカップ | 10位タイ |
CAT Ladies 2019 | 17位タイ |
ニトリレディスゴルフトーナメント | 優勝 |
日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯 | 44位タイ |
デサントレディース東海クラシック | 9位タイ |
マスターズGCレディース | 予選落ち |
樋口久子 三菱電機レディス | 優勝 |
TOTOジャパンクラシック | 優勝 |
伊藤園レディスゴルフトーナメント | 優勝 |
大王製紙エリエールレディスオープン | 2位 |
LPGAツアー選手権リコーカップ | 5位タイ |
ドライバー | G410 LST(10.5度 ロフト:-1度/STD、ウェイトポジション:STD、シャフト:ALTA J CB RED・S) |
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フェアウェイウッド | G410(#3/#5) |
ハイブリッド | G400(22度/26度) |
アイアン | i210(#6~#9、PW) |
ウェッジ | GLIDE 2.0(50度SS/54度SS/58度SS) |
パター | G Le2 ECHO( シャフト長:32インチ、ライ角:ブラック、ロフト角:2度、グリップ:PP59ガーネット) |
1998年11月15日、岡山県岡山市生まれ。ゴルフは8歳から始め、2度目の受験となった2018年にプロテスト合格。PINGのクラブを使い始めたのは高校1年生の頃だ。「フィーリングが自分にすごく合っていますし、打感が良いです」と印象を語る。2019年シーズンの開幕前に正式にクラブ契約を結び、プロゴルファーとしての本格的なキャリアがスタートした。
開幕第2戦の「ヨコハマタイヤ ゴルフトーナメントPRGRレディスカップ」でいきなり6位タイに入賞。この健闘の要因のひとつとなったのが、G410 PLUSドライバーだ。渋野選手のアドレスがハンドダウン気味であることは、後の大ブレーク以降に多くのゴルフフリークの知るところとなったが、この特徴的な構え方にもG410はスムーズに対応。ホーゼルのロフト・ライ角調整機能でライ角を3度フラットにアジャストしたことにより、ドライバーショットは飛距離、方向性ともにシーズンを通して好調を維持した。
プロ初優勝は派手に飾った。令和初のメジャー大会となった5月の第10戦「ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ」で、大会最年少優勝(20歳178日)。この勝利により"黄金世代"と呼ばれ、女子ツアーで台頭し始めた同い年のプレーヤーたちの中でも一際注目を集める存在となった。そして、約2か月後の第18戦「資生堂アネッサレディスオープン」では、最終日に残り4ホールから4打差を追いつきプレーオフに持ち込み、これを1ホール目で制してツアー2勝目を挙げた。
ルーキーにして7月までに2勝という好結果をもたらしたギアはG410 PLUSドライバーだけではない。強気な"壁ドンパット"は渋野選手のパッティングスタイルを表す代名詞にもなったが、そのアグレッシブなパットはSIGMA2 ANSERから繰り出される。「柔らかい打感が私のストロークにうまくハマっています。打ち出しからフォローまで自信が持てます」と、自身もこのパターに搭載された二重構造インサートとTR溝のテクノロジーを実感しているようだ。ちなみに前述の「資生堂レディス」では、最終日の15番ホールで約15メートルのロングバーディパットをねじ込み、ギャラリーから大喝采を浴びている。
そして、2019年シーズンを語る上で欠かせないのが、8月の「AIG全英女子オープン」での快挙だろう。海外メジャー初参戦ながら、通算18アンダーで実に42年ぶりとなる日本人2人目のメジャー優勝を成し遂げた。バッグの中の14本すべてをPINGのクラブで臨み、高難度のインコースで計18バーディ、ノーボギーという驚異的なプレーを披露。
特に記憶に残るのは、最終日最終組の優勝争いの最中で迎えた12番パー4だ。G410 PLUSドライバーを手にすると、グリーンサイドに池があるこのミドルホールで果敢にワンオンを狙い見事に成功。攻めのプレースタイルとG410のブレない飛びが世界中に知れ渡った。また、パッティングでも観衆を魅了。約4.5メートルのバーディパットを鮮やかにカップインさせた最終18番での"ウィニングパット"をはじめ、難しい距離感のパットを次々と決めてみせた。
全英での常に笑顔を絶やさないプレーぶりから「スマイリングシンデレラ」と称された渋野選手は一躍"時の人"に。帰国後は"凱旋優勝"を否が応でも期待される中での試合出場が続いた。その瞬間が訪れたのは9月の第29戦「デサントレディース東海クラシック」だ。なんと8打差を逆転するミラクルVで国内ツアー3勝目。獲得賞金も史上2位のスピード記録で1億円の大台に乗せ、賞金女王も狙える位置につけた。
季節は晩秋に移ろい、賞金女王レースが佳境に入った11月の第38戦「大王製紙エリエールレディスオープン」では、3連勝中の鈴木選手との熾烈な"一騎打ち"の展開に。ここで最終日に6アンダー66をマークし、1988年のツアー制施行後、日本人選手では史上2人目となるルーキーイヤーでの国内ツアー4勝目到達を果たした。
数多のスポーツファンが固唾を呑んで結末を見守った最終戦の「LPGAツアーチャンピオンシップリコーカップ」では、最後の最後まで優勝争いを演じて2位タイでホールアウト。賞金女王にはわずかに届かなかったが、鈴木選手に次ぐ堂々の2位にランクインした。また、年間を通じての総合的な活躍度を評価するメルセデスランキングでは1位(MVP)を獲得して"シブコ旋風"を巻き起こした激動のシーズンにおいて有終の美を飾った。
出身地 | 岡山県岡山市 |
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生年月日 | 1998年11月15日 |
特技 | ソフトボール、書道 |
ゴルフ歴 | 8歳~ |
平均バーディ数 | 1位 | 4.0000 |
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バウンスバック率 | 1位 | 26.0684 |
パーブレーク率 | 1位 | 22.5539 |
平均パット数(パーオンホール) | 2位 | 1.7582 |
バーディ数 | 2位 | 402 |
オーバーパーなしの連続ラウンド数 | 29 | ツアー新記録 |
ヨコハマタイヤゴルフトーナメント PRGRレディス | 6位タイ |
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Tポイント×ENEOS ゴルフトーナメント | 予選落ち |
アクサレディスゴルフトーナメント in MIYAZAKI | 予選落ち |
ヤマハレディースオープン葛城 | 27位タイ |
スタジオアリス女子オープン | 16位タイ |
KKT杯バンテリンレディスオープン | 20位タイ |
フジサンケイレディスクラシック | 2位タイ |
パナソニックオープンレディースゴルフトーナメント | 13位タイ |
ワールドレディスチャンピオンシップ サロンパスカップ | 優勝 |
中京テレビ・ブリヂストンレディスオープン | 36位タイ |
リゾートトラストレディス | 10位タイ |
ヨネックスレディスゴルフトーナメント | 46位タイ |
宮里藍 サントリーレディスオープンゴルフトーナメント | 45位タイ |
ニチレイレディス | 7位タイ |
アース・モンダミンカップ | 4位 |
資生堂 アネッサ レディスオープン | 優勝 |
ニッポンハムレディスクラシック | 7位 |
サマンサタバサ レディーストーナメント | 35位タイ |
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AIG全英女子オープン | 優勝 |
北海道meijiカップ | 13位タイ |
NEC軽井沢72ゴルフトーナメント | 3位タイ |
ニトリレディスゴルフトーナメント | 5位 |
日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯 | 33位タイ |
デサントレディース東海クラシック | 優勝 |
ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン | 22位タイ |
日本女子オープンゴルフ選手権 | 7位 |
スタンレーレディスゴルフトーナメント | 6位タイ |
マスターズGCレディース | 12位タイ |
スウィンギングスカート台湾選手権 | 39位タイ |
TOTOジャパンクラシック | 13位タイ |
伊藤園レディスゴルフトーナメント | 予選落ち |
大王製紙エリエールレディスオープン | 優勝 |
LPGAツアー選手権リコーカップ | 2位タイ |
ドライバー | G410 PLUS(10.5度 ロフト:-1度/フラット、ウェイトポジション:STD) |
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フェアウェイウッド | G410 LST(#3 ロフト:STD/フラット) G410 STD(#5 ロフト:-1度/フラット) |
ハイブリッド | G410(22度/26度) |
アイアン | i210(#5~#9、PW) |
ウェッジ | GLIDE FORGED(52度/56度) |
パター | SIGMA2 ANSER(プラチナム仕上げ) |
2019年シーズンは鈴木選手と渋野選手に加え、同じPING契約プレイヤーから複数のツアー優勝者が輩出された。その勝利を牽引したのが「G410」ドライバーだ。国内男女ツアーで実に"15"もの勝利を挙げたこのギアについて、優勝した各選手に印象を聞いた。
2019年シーズン最初の"勝ち名乗り"を上げたのが比嘉真美子選手だ。登場したばかりの「G410 PLUS」ドライバーを武器に開幕戦の「ダイキンオーキッドレディスゴルフトーナメント」で念願の地元・沖縄での優勝を達成。
開幕戦はまさに「G410 PLUS」を実戦使用した最初の試合となったわけだが、大会4日間でのドライビングディスタンスで2位。PLUSを採用後、ヘッドスピードは平均0.5m/s~0.8m/sアップし、ボール初速もそれに応じて確実に向上した。
「力強い球筋が出て、ドライバーがエンジンとなって自分のパワーを最大限に引き出してくれます」(比嘉選手)とのインプレッションの通り、平均飛距離において例年上位にランクインする比嘉選手にとって「G410 PLUS」ドライバーは好相性のようだ。
国内最高峰のメジャー戦「日本オープンゴルフ選手権競技」で栄冠を掴んだのが、長期におよんだ腰の故障から復活を遂げたチャン・キム選手だ。この試合で使用したのは「G410 LST」ドライバー。開幕当初は「G410 PLUS」で参戦していたが、7月の「全英オープン」からLSTにスイッチした。
キム選手はツアー屈指のロングヒッターとして知られているが、本人が常に意識して理想に掲げているのはあくまでも"つかまりの良いスイング"だという。そこで、若干スピン量の多かったPLUSから低スピン設計のLSTに変更。スピン量の軽減とともに、課題としていた左へのミスも解消された。
もちろん、驚異的な飛距離を生み出すパワーは健在。ドライビング・ディスタンスは平均315.83ヤードで通算3度目の1位を獲得した。「LSTは左へのミスも少ないので、思い切り叩けるようになりました」(キム選手)という積極性とLSTの直進性がマッチして、ツアーNo.1の"飛ばし屋"の称号をふたたび奪還することとなった。
またイーグル率でも3度目の1位を達成。LSTを携え、他選手よりも頭ひとつ抜けた飛距離でツアーを魅了した。
シーズンを通して安定的なプレーを維持し、賞金ランキング5位に入ったハン・ジュンゴン選手は、「G410」各ドライバーの特性と自身のコンディションを都度冷静に比較分析して好成績に結び付けた。
試合時にはPLUSとLST両方のクラブを準備。ラウンドスタート前の朝にスイングの状態をチェックしてどちらを使うか決めたという。
「PLUSは調子が良くない時でも安定感があり、LSTは曲がらずにボールスピードが上がるので飛距離が出ます」(ハン選手)
11月の「マイナビABCチャンピオンシップ」で4年ぶりのツアー4勝目。この試合ではLSTを採用し、4日間のフェアウェイキープ率が出場選手中トップの62.50%をマークするなど抜群のスイングコントロールを発揮した。余談だが、この大会の最終日には時を同じくして鈴木選手も女子ツアーで優勝。男女ツアーで「G410 LST」ドライバーがダブル優勝を記録した記念すべき日となった。